髙橋修法律事務所

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契約・不動産Q&A

詐害行為取消はどうかわるのか 民法の改正

2018.02.12

1 経営危機に陥った債務者が事業の再建をめざす場合、不動産の処分や担保設定、特定の債権者への弁済が、詐害行為取消や破産法上の否認の対象とならないか、いつも問題になります。
これまで抽象的な定めしかなくて、取り消される範囲が不明確だった詐害行為について、改正民法では範囲を限定し明定したことで、債務者は事業の再建をやり易くなります。また、今回の民法改正により破産法上の否認権行使と矛盾を生じないようにしました。

2 詐害行為として取り消される範囲の限定(改正民法424条の2、424条の3)
ア 債務者が相当の対価を得て財産を処分した行為については、次の要件のいずれも満たす場合にのみ、詐害行為として取り消すことができます。
・当該行為が不動産の売却やその他の財産の種類の変更であって、債務者が隠匿、無償の供与等の債権者を害する処分をするおそれを現に生じさせるものであること。
・債務者が、当該行為当時、対価として得た金銭等を隠匿処分する意思を有していたこと。
・受益者が、当該行為の当時、債務者が隠匿処分の意思を有していたことを知っていたこと。

イ 債務の弁済などの債務消滅行為や担保提供行為については、次の要件のいずれも満たす場合にのみ、詐害行為として取り消すことができます。
・弁済等が、債務者が支払い不能の時に行われたこと。
・弁済等が、債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたこと。

ウ 上記イの弁済等が、弁済期が到来していない債務の弁済その他債務者の義務でないのに行われた場合において、次の要件のいずれも満たすときは、上記イにかかわらず、詐害行為として取り消せます。
・弁済等が、債務者が支払い不能になる前30日以内に行われたこと。
・弁済等が、債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたこと。

このように、支払い不能前に行われる債務弁済や担保付与は、原則として詐害行為取消の対象となりません。 ただし、支払い不能の前であっても、債務者の義務に属さない担保提供や債務消滅行為については、支払い不能になる前30日以内になされた場合等は詐害行為取消の対象となります。

3 過大な代物弁済等の取り扱い(改正民法424条の4)
消滅した債務額より受益者の受けた給付が過大な場合は、上記2イにかかわらず、債務者と受益者が債権者を害することを知っていれば、消滅すべき債務の額を超える部分について詐害行為として取り消せます。

4 転得者との関係(改正民法242条の5)
ア 受益者からの第1次転得者が現れた場合、詐害行為の一般的な成立要件に加え、第1次転得者が、転得の当時、債務者の行為が債権者を害することを知っていたときのみ、債権者は転得者に対し詐害行為取消を請求できます。

イ 第1次転得者以後の転得者が現れた場合、全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者の行為が債権者を害することを知っていたときのみ、債権者は転得者に対し詐害行為取消を請求できます。