髙橋修法律事務所

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契約・不動産Q&A

錯誤はどうかわったか 民法改正

2020.11.18

1 改正前の民法95条は、「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」と定めていました。
つまり、契約(意思表示)が錯誤によって無効となるための要件として、
①法律行為の要素に錯誤があること
②表意者に重大な過失がないこと
が必要であると定めていました。

これに対し、改正民法95条1項・2項では、「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
① 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

② 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。」と定めています。

改正前の民法では、「要素」についての錯誤であることが必要であると定めていましたが、その内容については、条文上明らかでありませんでした。そのため、解釈により、「要素の錯誤」とは、その錯誤がなければ本人は意思表示をしなかっただろうと考えられるだけでなく、普通一般人も、その意思表示をしなかっただろうと考えられるほどに重要なものとされていました。

改正民法でも、要素についての錯誤であることが必要とされることに変わりはありません。ただ、改正民法では内容が明文化され、「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき」と定めました。

また、改正民法では「動機の錯誤」が明文化されました。
具体的には、「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」(95条1項2号)と定めました。
そして、「動機の錯誤」があった場合に契約が取り消せるのは、「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたとき」に限るとの要件が付け加えられました(95条2項)。これは、「表示」を要件とする伝統的な学説や多くの判例に沿ったものです。

 重過失 (改正民法95条3項)
改正前の民法では、意思表示をした者に重大な過失がないことが要件とされ、この点は、改正民法でも同じですが、改正民法では次の2つの例外が定められました。
ⅰ 相手方が、表意者に錯誤があることを知っていたか、または、重大な過失によって知らなかったとき
ⅱ 相手方が、表意者と同じ錯誤に陥っていたとき

この例外は、改正前の民法でも、解釈上認められていましたが、改正民法により明文化されました。これらに当たる場合には、表意者に重大な過失があったとしても、契約を取り消すことができることになります。

 効果 (改正民法95条4項)
「第1項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。」

改正前の民法では、錯誤がある場合、意思表示は「無効」であると定められていましたが、改正民法では、「取り消すことできる」とされました。

無効は誰でも主張できることが原則ですが、これまで最高裁判決は、原則として錯誤で意思表示をした者以外の者が無効を主張することは許されないとしていました。その効果は、取消しに近いものとなるため、今回の改正で取り消すことができるものと変更しました。
また、新たに、善意無過失の第三者には対抗できないと定めが設けられました。これは、改正前民法のもとでの多数の考え方を明文化したものです。

改正により、錯誤による意思表示の効果をなくすためには、意思表示をした者が相手方に取消しの意思表示をする必要があります。また、錯誤から脱し取消権があることを知った時以後に、追認すれば取り消せなくなり(改正民法124条)、契約の全部や一部の履行をしたり、履行の請求をしたりなどすると追認されたとみなされ、取り消せなくなります(民法125条)。また、追認可能時から5年間、行為の時から20年間経過すると取り消せなくなります(民法126条)。

髙橋修法律事務所では、錯誤が問題となる事件も多く扱っていますので、ご相談下さい。