髙橋修法律事務所

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訴訟件数の減少傾向と弁護士の数の激増

2019.07.05

司法統計によると、弁護士が関わることが多い地方裁判所の通常の民事訴訟の件数は2003年度をピークに減少傾向が現在も続いています。それに対し、弁護士の数は司法改革による法科大学院の設置、新司法試験の実施により2006年以降急増し、合格者を1500名程度にした現在も、全国の弁護士は2016年時点で36000名を超え、毎年1000名程度増え続けていると言われます。

訴訟の件数が減り続けている原因について論じる人は少ないですが、私は訴訟にかかる費用(費用と言っても弁護士費用が大半)や時間、労力に比べて、訴訟で得られる結果があまり見合わないことから訴訟を尻込みする人が多いことが原因でないかと考えています。そうすると、紛争を適正かつ迅速に解決するのを使命とする司法は、本来の機能を十分に果たしていないことになります。

また誤解されることが多いのですが、弁護士は訴訟の仕事だけしているわけでありません。ほとんどの弁護士は、法律相談が主な業務で、受任しても示談や調停などで出来るだけ訴訟を避けようと努力するのが通常で、最後の手段として訴訟するのは一握りの事件です。しかし、その法律相談にしても、最近はネットによる広告の普及により、電話やネットの相談だけで済ませようとする人が多くなり、法律事務所や弁護士会に足を運んで法律相談する人が少なくなっています。

裁判の事件数は減少し、弁護士の数が年々増え続ける傾向は当分続くと思われます。

10数年前、社会の隅々に弁護士を行き渡らせるというスローガンのもと、司法改革の旗を振り続けた人たちは、法科大学院制度の破綻や弁護士の激増で弁護士の経済的基盤を危うくさせているなど現在の司法を取り巻く現状を見て、これが改革の成果とでも言うのでしょうか。