髙橋修法律事務所

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優者たちへの伝言

2016.09.15

 

ながらくブログが野ざらし状態になっていました。
「勇者たちへの伝言 いつの日か来た道」という本を読み、その感想を書きたくなりました。
突然身売りされ昭和の時代とともにあっけなくなくなった勇者の球団「阪急ブレーブス」、その本拠地であった西宮球場を物語の中心にした感動の本です。

主人公の正秋は、かって西宮球場があった大型商業施設(西宮ガーデンズ)の中の小さなスペ-スで、かってブレーブスの応援団長だった人物に出会う。
その帰り道、目の前が突然暗くなり、気づくと阪急の試合が行われている西宮球場で、死亡したはずの父親と小学生の自分が野球を観戦している。タイムスリップした正秋は、交通事故で死亡した父と話をするなかで、やがて父の若き日の秘密を知る。

父の恋人、在日朝鮮人安子との悲しい別れ、地上の楽園への「帰国運動」に騙されて北朝鮮に帰国した安子の「教化所」での想像に絶する惨たんたる生活、「教化所」からの帰りに安子が偶然出会い結婚した夫とのその後も続く苦難の物語が、タイムスリップして時空を超え、時折西宮球場を登場人物の追憶の舞台にしながら進んでいく。
北朝鮮に安子が帰国する時、「安子、北朝鮮には行くな。金日成より誰よりもおれが日本で安子を幸せにしたる。たとえどんな差別を受けても全部おれが守ったる」と安子に言えなかったことを正秋が後悔する場面などは涙なくしては読めない。

阪急ブレーブスのバルボンや高井、ダミ声の応援団長など、かって西宮球場で実際に活躍した人物が著者の取材を受けて登場するなどノンフィックション場面とフィクション場面が交錯し、時々わけが分からなくなるが、とにかく一気読みすること間違いない面白い本である。

西宮球場には、かって京都に住んでいた時から、西本監督率いる強い阪急ブレーブスの試合を観に行ったし、その後尼崎の塚口に住んでいた時も勤め帰りに近くの西宮球場によく足を運んだ。
この球場は、甲子園に比べると小さな球場だが、優しいぬくもりが感じられる球場であった。人気がなく地味な球団であったが、なによりあの球場には3年連続で日本一にも輝いた強い阪急ブレーブスの勇者がいた。

球場で法被を着ただみ声の応援団長の扇子に合わせ、聞こえてきた「タタタタッタター、タタタタッタター、タタタタッタター、タッタタッタター」という応援の音頭が懐かしい。。