髙橋修法律事務所

      相談料は基本5,000円(税込)
 06-6361-6257

離婚Q&A

慰藉料の金額はどれくらいか?

2019.02.20

 離婚の慰謝料

離婚の慰謝料は、離婚原因となった有責行為による精神的苦痛に対する損害賠償請求権と、離婚により配偶者の地位を失う精神的苦痛に対する損害賠償請求権に分けられます。前者は離婚原因慰謝料、後者は離婚自体慰謝料といわれます。

判例では、慰謝料の算定要素として婚姻関係が破綻した経緯、有責行為の態様・程度・期間、関係修復への努力の有無、婚姻生活への誠実さ・協力の程度、年齢、性別、職業、経済状態、婚外子や認知の有無、生活費不払い、離婚による経済的不利益などを判断要素としています。

裁判所で認容した慰謝料額は、100万円程度から1500万円程度までと様々です。200万円という金額が比較的多いですが、平均の金額は300万円から400万円程度です。1500万円を認めた事件というのは、夫(会社代表者77歳)、妻(無職73歳)で婚姻期間52年、別居期間は約40年で夫の長期間の不貞行為の継続、女性と同棲し子供を認知、妻に40年間生活費の不払い、夫は会社を経営し平均以上の生活をしているというケースです。
判例からは、慰謝料額について婚姻期間、離婚原因などから一定の基準を見いだすことは難しく、どの要因をどの程度考慮しているか分からないことが多く、裁判官の価値判断に委ねられています。

参考までに以下のような判例があります。
不貞行為をいったん許された夫が、その後再び不貞行為を行って夫婦関係を破綻させたケースで、夫が、妻の前夫との間の子を養子として成人させた事情が慰謝料の評価を低減させる事情であると認めつつ、慰謝料を800万円とした判例。
性交拒否の慰謝料の判例としては、ポルノ雑誌に興味を示すが夫婦生活に応じない夫に対し500万円の慰謝料の支払いを認めた判例、婚姻に際し妻に自分の性交不能を告知せず、その後も性交不能が続いている場合に夫に200万円の慰謝料支払いを命じた判例、婚姻中に全く性的交渉を求めなかったことが原因で協議離婚したケースで夫に500万の慰謝料の支払いを命じた判例、妻が婚姻当初から性交渉を拒否し続けたことが原因で結婚9ヶ月で協議離婚したケースで妻に150万円の慰謝料の支払いを命じた判例があります。

2 不貞行為の相手方に対する慰謝料

最高裁の昭和54年3月30日判決は、夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務がある、と判示しました。

この最高裁の判決以後、下級審判決では不貞行為の相手方に対する慰謝料請求に限定を加えないケースがある一方で、原則として不法行為責任を認めたうえで、慰謝料請求に何らかの限定をする判例も数多く出ています。例えば、不貞の相手方の責任を副次的としたものや、肉体関係を持ったのが婚姻関係破綻後である場合に不貞の相手方の責任を否定したものなどです。また、慰謝料認容額が、1000万円の請求に対し150万円、2000万円の請求に対し200万円と少額になる傾向もあります。

事案により一概には言えませんが、示談交渉により実際に解決する示談額は100万円から200万円という金額が多いというのが、交渉の実務を行っている弁護士の感覚です。

なお、平成31年2月19日、最高裁は、元配偶者の不倫相手に対し、不倫による精神的苦痛とは別に、離婚を余儀なくされたことへの慰謝料を請求できるかどうかが争われた事件で、「離婚は夫婦間で決めるべき問題で、特段の事情がない限り不倫相手には請求できない」との初判断を示した。
一般的に、元配偶者の不倫相手には不倫自体の慰謝料を請求し、不倫が離婚の原因になった場合はその分が増額されます。この事件では不倫慰謝料の請求権が時効(3年)で消滅していたため、時効が成立していない離婚慰謝料が認められるかが争点になっていました。
最高裁は、不倫が原因で離婚に至ったとしても、直ちに離婚の責任を負うことはない。離婚慰謝料は、不倫相手が不当な干渉をした結果、やむを得ず離婚したなどの事情があるときだけ請求できると判断しました。
判決によると、男性は2010年に妻の不倫を認識し、不倫慰謝料の請求権が消滅した後の15年に離婚し、不倫相手に約500万円の賠償を求めて提訴しました。最高裁は、約200万円の支払いを命じた水戸地裁龍ケ崎支部判決を支持した東京高裁判決を破棄し、男性の逆転敗訴が確定しました。

 内縁関係の破棄による慰謝料

内縁関係を不当に破棄した場合の慰謝料の算定要素は、基本的には離婚の場合と同じです。
内縁関係は実体として婚姻関係と同視できるものの、婚姻届がないため特有の問題が生じることがあります。内縁関係の一方または両当事者に配偶者がいる、いわゆる重婚的内縁関係はその一つです。
昭和30年代の昔の判例は、この重婚的内縁関係は原則として法的保護の対象外で、例外的に配偶者のある側の違法性が著しく大きいと評価できる場合に慰謝料請求が許されるとしてきました。しかし、最近の判例では、妻との法律婚が形骸化している場合には、内縁関係に相応の法的保護が与えられるべきとするなど、従来の判例の考え方から重婚的内縁関係を法的に保護するケースを広げたと見られるものが現れています。

婚約破棄による慰謝料

正当な理由なく婚約が破棄された場合、解消について責任がある者は慰謝料等の損害賠償の義務を負います。
判例で認容される慰謝料の金額は30万円程度から500万円を超えるものまでかなり金額に幅があります。
慰謝料の算定要素は個々の具体的事案により様々ですが、最近の裁判所は慰謝料額を50~100万円程度に比較的低額に抑える傾向にあります。詳しいことは、婚約破棄のところに書いていますので、ご覧ください。   

髙橋修法律事務所は慰謝料請求事件を数多く扱っていますので、お気軽にご来所ご相談ください。