髙橋修法律事務所

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相続Q&A

相続に関する民法改正

2019.03.19

相続について民法が改正されます。

自筆証書遺言の方式を緩和する方策は平成31年1月13日から施行されました。遺産分割前の預貯金の払戻し制度、遺留分制度の見直し、相続の効力等に関する見直し、特別の寄与等の原則的な施行は令和元年7月1日となります。また、配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等の施行は令和2年4月1日です。

相続に関する民法改正は1980年以来で、社会の高齢化が進み、残された配偶者が生活に困窮するのを防ぐ仕組みづくりが必要なことを中心に改正されました。

〇配偶者の居住権を保護

1 配偶者居住権

民法では、遺産分割について遺言がなく配偶者と子どもで分ける場合、配偶者が2分の1を相続し残り2分の1を子どもの人数で分けると定めています。
改正法では、遺産分割の選択肢として、配偶者はそれまでの住居に住み続けられる「配偶者居住権」を新設しました。

住居の所有権を長男など配偶者以外の者が持っても、配偶者は居住権が得られます。特に期間を決めなければ、配偶者は死亡するまで住むことが出来ます。
現行制度でも配偶者は遺産分割で所有権を得ればそのまま住み続けられます。しかし、所有権を取得すると、その分預貯金などその他の財産の取り分が少なくなり生活が苦しくなる可能性があります。所有権ではなく居住権の場合、売却する権利がない分、評価額は小さくなり、預貯金などの財産が多く受け取れるようになります。
例えば、遺産の内訳が評価額2千万円の住居と、その他の財産3千万円の総額5千万円とします。現行制度では配偶者が住居に住み続ける場合、住居の評価額が2千万円なので、その他の財産の取り分は500万円になります。居住権の場合は評価額が1千万円でも、その他の財産は1500万円得られます。

2 配偶者短期居住権

改正法では、遺産分割が終了するまで、それまでの住居に無償で住める「短期居住権」も新たに設けられました。夫や妻が亡くなったときに、配偶者が急に住まいを失うことを避けるためです。
配偶者は,相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間,引き続き無償でその建物を使用するこ とができます。
遺贈などにより配偶者以外の第三者が居住建物の所有権を取得した場合や,配偶者が相続放棄をした場場合でも、相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,居住建物の所有権を取得した者は,いつでも配偶者に対し配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができますが,配偶者はその申入れを受けた日から6か月を経過するまでの間,引き続き無償でその建物を使用することができます。

〇遺産分割に関する改正

1 配偶者の保護(持戻し免除の意思表示の推定)

婚姻期間が20年以上である夫婦の一方配偶者が,他方配偶者に対し,その居住用建物又はその敷地(居住用不動産)を遺贈又は贈与した場合については,民法第903条第3項の持戻しの免除の意思表示があったものと推定し,遺産分割では原則としてその居住用不動産の持戻し計算は不要となります(その居住用不動産の価額を特別受益として扱わずに計算することができます)。

配偶者に住居を生前贈与するか遺言で贈与の意思を示せば、特別受益の持ち戻しの免除があったと推定され、その住居は遺産分割の対象から外れることになります。現預金や不動産などの財産を相続人で分ける際に、配偶者の取り分は実質的に増えることになります。これまでは住居以外の財産が少なければ、配偶者が遺産分割のために住居の売却を迫られることもありました。

ただ、持ち戻しの免除はあくまで推定ですので、何らかの反証で覆されることがありますので、遺言や紙で持ち戻しの免除の意思表示をしておいた方が良いでしょう。

2 遺産分割前の預貯金の払戻し制度の新設等

相続財産の預貯金の遺産分割前の払戻しは、相続人全員の同意がない限り、原則として認められませんでした。しかし、今回の法改正で、相続人全員の同意がなくても、遺産分割前に預貯金の仮払いを受けることができるようになります。
その方法は、次の2つがあります。

①金融機関の窓口で直接仮払いを受ける

裁判所での手続きが不要で手間も日数も費用もかからないことや、仮払いが必要な理由を求められないメリットがあります。
但し、生活費や葬儀費用の支払,相続債務の弁済などの資金需要に対応できるよう,遺産分割前にも払戻しが受けられる制度として新設されますので、下記の払戻し上限額があります。

相続開始時の預貯金債権の額(預貯金残高)× 1/3 × 仮払いを求める相続人の法定相続分

法務省令では一つの金融機関ごとに150万円が払い戻し額の上限となります。

②家庭裁判所に仮払いを申し立てる

この方法は、払い戻し額の上限がないというメリットがありますが、家庭裁判所に遺産分割調停(または審判)を申し立てたうえで、さらに仮払いを申し立てなければならず、手間と日数と費用がかかるデメリットがあります。

3 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲

ア 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても,共同相続人全員の同意により,処分された財産を遺産分割の対象に含めることができます。
イ 共同相続人の一人又は数人が遺産の分割前に遺産に属する財産の処分をした場合には,処分をした共同相続人については,アの同意を得ることを要しません。

〇遺言制度の改正

1 自筆証書遺言の方式緩和
生前に被相続人が自分で書く自筆証書遺言は、自宅で保管するか金融機関や弁護士に預けていますが、所在が分からなくなるなどの心配がありました。しかし、今回の法改正により、本人が自筆証書を法務局に持参すると、日付や署名、押印といった要件をチェックしたうえで保管してもらえます。これを全国の法務局で保管できるようにして、相続人が遺言があるかどうかを簡単に調べられるようになります。
法務局に預けた場合、家庭裁判所で相続人が立ち会って内容確認する「検認」の手続きは不要になります。

また具体的な不動産や預貯金などを記載する財産目録の部分はパソコン書きや代筆が認められるようになりました。自筆でない場合は目録の全ページに署名と押印をしなければなりませんが、遺言全体を自筆で作成するのに比べて労力はかかりません。

遺言には公正証書遺言もあり、この遺言は公証人が形式の不備などがないように作成して、公証役場で保管するため改ざんや紛失が避けられます。ただ作成に証人2人以上が必要であるなど手間や費用がかかります。自筆証書遺言は1人で手軽に作成できる利点があります。

2 遺言執行者の権限の明確化等
ア 遺言執行者の一般的な権限として,遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対し直接にその効力を生ずることを明文化しました。

イ  特定遺贈又は特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言のうち,遺産分割方法の指定として特定の財産の承継が定められたもの)がされた場合における遺言執行者の権限等を,明確化しました。

〇遺留分制度の改正

1 金銭債権化

遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている現行法の規律を見直し,遺留分に関する権利の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権(遺留分侵害額請求権)が生ずることにしました。

現行法では、遺留分減殺請求があった場合、贈与または遺贈された財産そのものを返還する現物返還が原則で、金銭での支払いは例外というでした。しかし、改正後は金銭請求に一本化されます。

遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者又は受贈者が,金銭を直ちには準備できない場合には,受遺者等は,裁判所に対し,金銭債務の全部又は一部の支払につき期限の許与を求めることができることになりました。

2 生前贈与と遺留分

遺留分の計算で、価額を算入できる特別受益は、相続人に対する生前贈与は相続開始前10年以内のものだけになります。
現行法では、特別受益に当たる相続人に対する生前贈与は、期間の制限なく遺留分算定においてその価額を算入されましたが、改正後は、相続開始前10年以内という制限がつきます。

相続人以外の第三者に対する生前贈与は、現行法と同じく、相続開始前の1年間にされたものだけが参入されるのが原則です。。

3 不相当対価と遺留分 

不相当な対価による有償行為の減殺時の対価の償還が不要になりました。

例えば、時価1000万円の土地を100万円で譲渡するような場合、土地の買主にとって、900万円(1000万円-100万円)の贈与を受けたと同様の利益が生じ、また、その分、相続財産が減少して遺留分権利者に損害を与えているので、遺留分権利者は、この差額分の減殺を請求することができます(有償行為の当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってした場合に限ります。)。
現行法では、差額を減殺するのではなく、対価である100万円を償還して(支払って)から、有償行為の目的物の価額である1000万円について減殺します。しかし、改正後は、対価の償還が不要で、直接、差額の減殺を請求できるようになります。

〇相続人以外の者の貢献を考慮

被相続人の親族で相続の対象にならない人でも、介護や看病で被相続人の財産の維持などに貢献した場合は、相続人に金銭を請求できる仕組みも盛り込まれました。