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裁判員制度に企業はどう対応すべきか

裁判員制度のイメージ

1 裁判員制度 
 平成21年5月21日から裁判員制度がスタートし、7月には裁判員が参加する刑事裁判の公判が実際に始まりました。
 裁判員制度は、国民が裁判員として刑事裁判に参加し、被告人が有罪かどうか、有罪の場合どのような刑にするかを、選任された6人の裁判員が3人の裁判官と一緒に決める制度です。
裁判員制度の制定は、刑事裁判が専門的になり過ぎて難解なことや裁判の長期化などが批判され、また高い有罪率の一方で冤罪事件がマスコミでとりあげられる など司法に対する国民の信頼が揺らいだという社会的背景があります。この制度により、専門家である職業裁判官だけで判断するのでなく、国民が刑事裁判に参 加することで、裁判が身近で分かりやすいものとなり、司法に対する国民の信頼の向上につながることが期待されています。
 国民が裁判に参加する制度は、大きく分けますとアメリカ、イギリスなどの陪審制とフランス、ドイツ、イタリアなどの参審制があります。日本の裁判員制度 は、事件ごとに選任される裁判員が裁判官と合議体を構成し、有罪か無罪かだけでなく量刑も行うもので、陪審制と参審制の折衷的な制度といえます。

2 裁判員の選任手続の概略
 市町村の選挙管理委員会が選挙権のある人の中から翌年の裁判員候補者の予定者となる人を毎年抽選で選び、裁判員候補者予定者名簿を地方裁判所に送付しま す。送付を受けた地方裁判所は裁判員候補者名簿を調製し、毎年12月頃までには裁判員候補者に通知し、調査票を送付します。そして、地方裁判所は事件ごと に候補者名簿の中から抽選でその事件の裁判員候補者を選び、その後裁判所で候補者から裁判員を選任する手続が行われます。

裁判員候補者の員数の割当、通知(地方裁判所)

裁判員候補者予定者名簿の調製・送付(市町村の選挙管理委 員会)

裁判員候補者名簿の調製、裁判員候補者への通知・調査票の 送付(地方裁判所)

裁判員に就けない一定の事由(国会議員、司法関係者、自衛官等一定の公務員や法律専門職等)や客観的な辞退事由(70歳以上、学生・生徒、過去5年内に裁判員等を経験した人など)の有無を調査票に記載・返送

候補者名簿から呼び出すべき裁判員候補者をくじで選定、呼出状・質問票の送付(地方裁判所)

質問票には、重い疾病や傷害、同居の親族の介護や養育、事業の重要な用途があり自らが処理しなければ事業に著しい損害が生じるおそれがある、父母の葬式など社会生活上の重要な用務で他の期日に行うことができない等の「やむを得ない理由」で裁判員の職務を行うことや裁判所に行くことが困難な辞退事由を記載できます。

裁判員等の選任手続期日(裁判長が指揮)

質問・異議・申立・不選任請求

選任決定、宣誓、審理、公判期日(普通は3日、長くても5日で終了予定)

企業のイメージ

3 企業の対応
 裁判員に選任される確率からすれば、多くの中小企業の従業員が裁判員に選任されることになりますが、大企業と違って中小企業にとっては大きな負担となり ます。現実問題として従業員が数十名以下の企業では、従業員が裁判員に選任され裁判所への出頭が義務づけられますと、事業活動に与える影響は極めて大きい と思われます。このように、裁判員制度が企業活動に与える影響は決して小さくありませんが、さまざまな知識や経験をもった市民が裁判員として参加すること に、この制度の重要な意義があることを考えますと、この制度が日本で定着するには、中小企業を含む全ての企業ができる限り従業員の出頭を確保する必要があ り、そのためには各企業が裁判員制度を十分に理解して協力することが不可欠となります。

①労働時間・休日・休暇
 従業員が裁判員に選任された場合、従業員は裁判所に出頭する義務があります。仕事の都合という理由で裁判所への出頭を拒むことはできません。会社として は、従業員が裁判員として職務を執行するために必要な時間を与えなければならず、その時間について労働義務を免除することが必要です。労基法では、「使用 者は、労働者が労働時間中に選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない」と定めており、裁判員としての職務も、この「公の職務」にあたります。会社が従業員に必要な時間を与えないときは、責任者は6ヶ月以下の懲役または 30万円以下の罰金に処せられ、会社自体も30万円以下の罰金に処せられます。また、裁判員法でも労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことなどを理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはならない旨定めています。
 また、会社が裁判員に選任された従業員に対し、仕事に休まれては業務に支障が出るとして辞退の申立てをするよう命じることは、従業員が裁判員となること を間接的に拒むことになり、このような業務命令は前記の規定との関係で問題となりますので、差し控えなければなりません。
 従業員が裁判員候補者として裁判所から呼び出された日や、裁判員としての職務を行った日について、会社が従業員に対し年次有給休暇を取るよう命じること はできません。従業員が年次有給休暇を取るかどうかは従業員が自由に判断すべきで、会社がその取得を命じることはできません。

②賃金
 会社は、従業員が裁判員としての職務を行う時間について、法律上有給にする義務はなく、有給にするか無休にするかは各会社の判断に委ねられます。
 企業がこの点についてどのような対応をしているのか、調査結果(「労政時報」3734号98頁)をみますと、従来から公職に就く場合の休務ルールを就業 規則で決めており、そのルールを適用する企業が6割を超えるほか、「裁判員休暇制度」を新設するなど何らかの休暇を付与する企業が大半を占めています。ま た、そのような企業では、通常の勤務時と全く同じ有給扱いとし、賃金を控除しない企業が約9割に及んでいます。
 裁判員には裁判所から日当が支給されますが、これは職務に対する報酬ではなく、例えば裁判所に出頭するための諸雑費など職務を行うにあたって生じる損害 の一部を補償するものと説明されています。従って、裁判員休暇を有給とした場合、従業員が会社から受け取る賃金とこの日当の両方を受け取っても、二重取り したことにはなりません。
 なお、裁判員休暇についてはそもそも無給にすることも可能ですので、本来1日勤務していたら支払われるべき賃金(例えば1万円)と日当(例えば8000 円)の差額の2000円だけを支給することは、就業規則などで定めれば可能です。

③出張・転勤
 従業員が翌年の裁判員候補者名簿に記載されたという通知を受けた場合、その従業員は1年間はいつ呼び出しを受けるか分からない立場に置かれます。しか し、それだけで日常業務や社会生活で拘束を受けるわけではありません。従って、会社はその従業員に通常どおり海外出張などをさせることは差し支えありませ ん。裁判所から送られてくる調査票には企業の決算期や農業の収穫期など自分が裁判員になることが難しい時期を2ヶ月指定することもできるようになっていま す。調査票にそのような具体的事情を書いて提出すれば、裁判所は2ヶ月程度であれば、具体的対象事件の呼出しについて配慮してくれることになっています。
 また、業務上の必要があって、裁判員となった従業員に転勤を命じることも、裁判員を辞退させる目的で遠隔地への転勤を命じるなど不当な動機や目的がない限り、権利濫用とはならず許されます。

④その他
 裁判員法は、何人も裁判員等の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならない旨定めています。「公にする」とは、インターネット上 のホームページへの掲載など不特定多数の人が知ることができる状態にすることで、特定の人や少数の人に伝えることまでは禁止されていません。従って、本人が業務上の必要から、上司に裁判員等に選任されたことを話して休暇を申請したり、会社や上司が取引先に「○○は裁判員に選ばれたのでその期間中は○○が担当します」と連絡することは差し支えありません。

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